そもそもタバコっていつから始まったの?

タバコの原産はアメリカ大陸。古代マヤ文明の壁面に、神が口にくわえているものがあって、これがタバコの原点と考えられることから、7世紀頃がタバコの始まりとされています。しかし、この時は嗜好品ではなく、神聖なものとされていました。

その後、13世紀に誕生したインカ文明、15世紀のアステカ文明へと伝えられ、喫煙の形態も吸う・嗅ぐ・噛むと様々に変化し、アメリカ大陸から世界に伝えられたのはタバコの始まりと言われてから800年程も後のことです。

16世紀にタバコ税を40倍に上げた国王がいた!

16世紀後半には、ヨーロッパ各地で疲れを癒すハーブとして、喫煙の習慣が一般的になっていました。

しかし、これに異議を唱えたのがイギリスのジェームズ1世。イギリス王の即位後まもなく、「タバコ排撃論」というパンフレットが配布されました。そのパンフレットには、タバコは「不潔な風習」「悪臭を放つ習慣」と記されており、また、薬草として使われることにも疑問を呈し、「脳に有害で肺に危険な風習である」と。

タバコに含まれる成分や健康被害の詳細が分からなかったこの時代なのに、なぜジェームズ1世は脳や肺に害があると分かったのでしょうか。

タバコを習慣的に吸っている人が、タバコがなくなったときに求める姿、咳き込む姿などを見てそう思っていたのでしょうか。

確かに、ニコチン中毒は脳の病気とも言えますし、タバコによる肺の健康被害は言わずと知れたものです。ジェームズ1世はタバコを吸う人々を見て、健康被害を呈したのだとしたら、先見の明があった人物だと思いませんか。

ジェームズ1世はこれらのことから、タバコを排除しようとタバコ税を40倍に上げましたが、それでも庶民の生活からタバコをなくすことはできませんでした。

誰かにタバコをやめさせようと、色々と試みても、なかなかやめさせられないのは、今もその時代も同じです。

タバコ税を大幅に引き上げてもなお、吸う人がいるということは、タバコの中毒性が良くわかるものです。今のタバコと違って、ニコチン量も分からず、フィルターもなかったでしょうから、今よりもっと、健康被害は大きいものだったのかもしれませんね。

その他、フランスでもタバコを禁止した国の歴史があります。

フランスでは、ルイ14世が国王に即位すると同時にタバコが禁じられました。しかし、タバコの税収がフランスの国庫収入に欠かせないものだったことから、厳しく取り締まることはできませんでした。

そしてトルコでは、オスマン帝国14第皇帝のアフメト1世が喫煙を厳しく取り締まり、その息子であるムラト4世の時代には、喫煙者に絞殺刑など非常に重い刑を科すという、残虐で厳しい取り締まりが行われました。

そこまでして、タバコを排除しようとした背景には、専制君主による弾圧もありましたが、タバコには健康被害があることが分かっていたからではないでしょうか。

タバコはどうやって世界に広がっていったの?

そもそも、タバコがヨーロッパに伝わったのは、コロンブスの新大陸(アメリカ大陸)発見がきっかけでした。

1492年、コロンブスはアメリカ大陸の西にあるサンサルバドル島に到着。コロンブスはガラス玉や鏡などを先住民に贈り、そのお返しとして贈られたのが「香り高い乾燥した葉」であるタバコだったのです。こうしてコロンブスによって持ち帰られたタバコがヨーロッパに伝えられました。

ヨーロッパでもタバコが栽培されるようになりましたが、ヨーロッパでは当初、嗜好品ではなく、薬草として珍重されていました。スペインが南米の各地を植民地化したことで、先住民のタバコの使い方を文化として取り入れることで、喫煙がスペインに広まり、イギリス、フランスとヨーロッパ各地にも広がりを見せました。

一方、スペインやイギリスの植民地であり、タバコの原産国アメリカでは、タバコは主にヨーロッパに輸出されており、その輸出量は徐々に拡大。世界の葉タバコ供給国となっていました。

そんな中でも、1634年、ニューイングランドのマサチューセッツ議会において、公衆の面前でのタバコの摂取、2名以上でのタバコの摂取が禁じられる法令を成立。さらに1644年にはタバコの商品化を禁止。しかし、法令で禁止されているにも関わらず、タバコの習慣を抑えることができず、1646年に法令が廃止されました。

その後、ヨーロッパでのシガレット流行に伴い、1860年代にはニューヨークでもシガレット製造が始まり、タバコ産業がますます発展。シガレットが世界中で主流となっていきました。

こうして世界中に広がったタバコは世界各国で多くの人を虜にしました。それはタバコを吸うとすっきりするという錯覚や、ニコチンによる中毒症状が原因なのかもしれません。

初めてタバコを吸ったとき、むせて「なぜコレがウマいの!?」と思いつつ、格好付けて吸った経験はありませんか?それがいつしか日常的に吸うようになったのは、自分がニコチン中毒だということに、自ら気づかないようにしているのではないでしょうか。

現在の世界のタバコ事情

これまでの長い歴史の中で、重い刑を科してもなくなることがなかったタバコ。タバコの健康被害が重大なものであると認識され始めた近年、世界各国で禁煙運動が強まってきています。

1988年、WHO(世界保健機関)が世界禁煙デーを制定。禁煙を推進するための記念日を毎年5月31日としました。

2004年には世界で初めてアイルランドが国全体を全面禁煙にする法律が施行。その後、ヨーロッパ、アメリカ、アジアなど世界各国で屋内全面禁煙の動きが進みます。2016年時点では屋内全面禁煙になっている国は55ヵ国となりました。

神聖な儀式に使われていたタバコが1400年以上の歴史を経て、今は健康を害するものに変化。長い歴史の中で変化してきたように、私たちのタバコに対する意識の変化も必要な時代です。誰もがタバコの害に悩まされない時代になるよう、まずは自分から禁煙意識を持つことが第一歩です。たとえそれが自己暗示であっても結構です。

タバコを吸っている自分を、家族や周りの人がどう思っているかを、あえて聞いてみるのも一つの方法です。ニコチン中毒である自分を自覚することで、心の奥底に潜む喫煙願望という小悪魔を撃退できるかもしれません。

禁煙ライター 黒田知子

参考
上野堅實著『タバコの歴史』大修館書店、1998年
大人の嗜好品研究会編纂『タバコを知ってタバコをやめる 煙草の蘊蓄』彩図社、2005年
中村正和. 進んでいる世界の受動喫煙対策. e-ヘルスネット. 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-05-002.html

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